紙屋悦子の青春 << 2006レビュー >> シュガー＆スパイス 風味絶佳
すごいですね。大地康男は。製作総指揮、企画、脚本、主演がすべて大地康男。全編に大地康男の情熱がほとばしっています。
大地康男の問題意識、そしてフィリピンで映画を撮りたいという思いが、ひしひしと伝わってきます。
茨城の農村の嫁不足問題から端を発して、あまりにひどい仕打ちを受けた大地康男が演じる正男という男は、フィリピンで一気に身を持ち崩す。
日本ではまじめないい人だったのに、フィリピンでは一転してのキャラチェンジです。
まあ、それだけひどい目にあったよね、正男は。どうにでもなれという気持ちも分かります。
日本の農家に嫁が来ないという構造的な問題、農業という職業が軽んじられている実態、フィリピンに買春に行くいい年をしたおっさんたち、そしてそれを現地の人はどう見ているのか、さらには人身売買まがいの現地ブローカー、フィリピンの凄まじき地域格差などなど、大地康男は我々に次々と問題を提起します。
（観てから読んで→）
ホテルに勤めるクリスティナと出会い、彼女の家の農業を手伝うというくだりでは、ウエスタンっぽい雰囲気が。弟との交流がそう思わせるんでしょうか。シェーンっぽいというか。
かつて、伊丹十三の「タンポポ」はラーメン・ウエスタンなんて呼び方もされていたけれど、それをいうならば大地康男のこれは、農業・ウエスタンでしょうか。でもマカロニ＝ラーメンという対比だったので、農業じゃダメか・・・。
あの畑を荒しに来る奴らが絶対に現れると思い込んでました・・・。というか現れてほしかった。例のブローカー社長の一派が正男に裏の仕事を続けさせるために乗り込んでくるとかねえ。
（←ここまで）
久しぶりに観た富田靖子は、役柄に過不足なくちょっと寂しくなりました。アイコ十六歳は遠い・・・
でも、この映画のタイトルはどうなんでしょう。クマインカナバーなんて、オウムの修行名かと思ってしまう。恋するトマトっていうのも、内容と合っている部分もあるけれど、なんかちょっとぴりっとこない。
このタイトルで損をしている部分は多いと思う。
シネマ・クレール石関にて
−２００５ゼアリズ／１２６分−
シアターＦ．通信
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