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「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレの新作ということで宣伝されてますが、この見せ方、描き方がすごいんです。
イタリアにやってきた、謎めいた外国人の女性。そして、フラッシュバックのように差し挟まれる映像の断片。なんだか酷い人生を送ってきたようであるけど、それが今の不可解な行動とどう結びついているのかが、まったく見えません。この展開から目が離せない。
だってねえ、裸で仮面をつけてオーディションのようなことをやらされていたり、むりやり男たちに縛られていたり、かと思えば、広大なゴミ捨て場をさまよっていたりして、これはなに？？って感じになりますよね。
とある裕福な一家に徐々に近づいていくエレーナという女性の過去だということは分かるんだけど、それがどう今と結びついているの？ エレーナの目的は一体なに？ この一家に対して何の思惑があるの？
描かれることのひとつひとつに、これほど緊張感を持って対峙させられる映画もめったにありません。なんか、すごい。映画の底力を感じます。人間の底知れぬ深遠を覗かせてくれる映画です。
（観てから読んで→）
アダケル家に近づいていた時のエレーナは過去と決別しようとして果たせずにいたけれど、映画の最後のエレーナにとっては過去と決別しなかったからこその僥倖があったわけです。エレーナが捨て去ろうとしてばかりいた過去から思いがけない贈り物のような感じです。
エレーナの最後の微笑みに救われます。ああ、やっぱり自分とは似ていないわねというような苦笑いが混ざった表情だけど、血はつながっていなくても、心はつながっていたんですね。エレーナのような人生にもこんなも素晴らしいものが待っていたなんて。しみじみと救われます。
（←ここまで）
シネマ・クレール丸の内１にて
−２００６イタリア／１２１分（R-15）−
シアターＦ．通信
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