今度は愛妻家 << 2010レビュー >> ゴールデンスランバー
| ストーリー | キャスト | 感動感銘度 | 衝撃度 | 印象度 | 総合 |
| １．５ | ２．５ | ２．０ | ２．０ | ２．５ | ４２ |
※各項目は5点満点、総合は100点満点
中山美穂が、12年ぶりにスクリーンに復帰したということで話題です。しかも原作が夫の辻仁成、監督が「私の頭の中の消しゴム」のイ・ジェハン、オール日本人キャストなのに韓国映画というように、他にも話題が豊富な作品です。
婚約者がいながらも、海外赴任先のバンコクで知り合った女性と逢瀬を重ねてしまう、ダメダメ男の東垣内の愛の葛藤（笑）を描いています。
西島秀俊が演じるこの役は、イースタンエアラインズという航空会社のエリートらしいんだけど、ひがしがいとうと読むこの名前からしてどうなの？ 石田ゆり子演じる割と古風な感じの婚約者とのシーンも、なんだかこんなの見せられてもなあという感じで、いまどきこんなの描くかよ、いつの時代の作家の小説だよって感じで、なんだかついていけそうもない嫌な予感が・・・。
この婚約者の光子は、詩のようなものを書き溜めていて、それがタイトルにもつながっていくわけだけど、この後に出てくるバンコクのホテルのオーサーズ・スイートやらのサマーセット・モームと名づけられた部屋の道具立てといい、読んだこともない辻さんの作家としての自意識というか自負心というか美意識というか、そういうのを感じてしまって、かなり辟易としてしまいます。
しかし、こんなにそうそうにめげてはいけない。萎える気持ちを奮い立たせて、ターゲットを東垣内に絞って、必死に彼に感情を預けようと決心しつつ映画に再集中。
婚約者を日本に残し、バンコクで中山美穂演じる沓子（とうこ）と出会う東垣内。同僚と飲みに行った場で、同僚の彼女ということでその席に現れる沓子。お互いに気になったようで、その後に、東垣内の部屋にやってくる沓子は、いきなりスカートをたくし上げて、下着を脱いで、大胆な行動です。当然、二人は関係を持ってしまうわけですが、Ｒ１５＋の意味の片鱗を見せてくれるのはここだけです。普通、最初にこれだったら、この後は！！！って思うじゃない。でも、そうはなりません。まあ、もとアイドル、現人妻の中山美穂にすれば、かなりの頑張りとは思いますが。
なんだか、セリフもいちいちひっかかります。単に自分と合わないだけなんだろうけど、沓子が東垣内のことを、ルイ・ヴィトンで気に入ったものを見つけて、いてもたってもいられず手に入れたような感じだとか言ったり、東垣内が自分の夢を空を飛びたかったと言ってみたり。
それに対して沓子はパイロットになればよかったじゃないっていうんだけど、それじゃ１機しか飛行機がとばせない、自分の飛行機で空中を覆いたいと言うのだけど、それじゃ最初に、空を飛びたかったじゃないくて、空に飛行機を飛ばせたいと言うべきじゃないの。
自分で空を飛ぶのと、経営として飛行機を飛ばせるのとは夢の質がかなり違うと思うんだけど。東垣内の野心というか、上昇志向の強烈さを感じさせる話の一端なんでしょうけど。
それにしては、沓子と遊んでいて、会社を何日も休んで、上司を怒らせたりしてるんですからね。いったい、何をしてるのか、分かりません。
（観てから読んで→）
日本に婚約者がいながらも、沓子にのめりこんでしまう東垣内。自分が結婚するまでの、ひと時の関係のつもりだったのに、自分が思いのほか沓子に入れ込んでいることに恐怖を感じたのか、時としてかなり冷淡になったりして、感情は不安定になっていきます。
そして、お互いを離れがたく感じながらも、関係を絶つために沓子はニューヨークへ旅立っていきます。そして沓子を空港で見送った東垣内のところに現れるのは、結婚をするためにバンコクへやってきた婚約者の光子です。
なんだか早いけれど、ここで終わりか・・・と思っていたら、さらに映画は続き、段々と悪夢のような様相になって行きます。
話は、２５年後。東垣内は副社長になってるんですね。それにしても、ここからの沈鬱な感じは一体どうしたの？ この取締役会にしても、この雰囲気はないだろうに。大丈夫か、この会社は？
それにしても、いきなり副社長とは・・・。こんなのが偉くなる会社って嫌だなという感想しかないんですが。
東垣内ってエリートという設定らしいけど、それが映画の中ではまったく分からないのが、この映画の最大の驚きです。
会社のため、家族のために、自分を犠牲にしてきたらしいです。（←沓子がそう言ってた）
でも我々の眼に映ってきた東垣内は、女と遊んで会社を欠勤したり、友達と女を巡って喧嘩をした後翌日の会社内で人目もはばからずに関係修復を図ったり、支店開設祝いで外部の人間もたくさん来ているのにいきなりその場で自分の結婚式の招待状を配りだしたりと、やっていることが支離滅裂な男です。
ただの公私混同のばか社員じゃないの。こんなのが偉くなっていったら、他の社員は浮かばれないよね。
１９７５年といったら、「沈まぬ太陽」の恩地さんは、懲罰人事の海外勤務で大変な目にあっていた頃だっていうのに。
そんな男だから、副社長になっても、役員室で暗い顔しながらぼーっとしてるだけです。本当に大丈夫か、この会社は。結局、社長にまでなっているし。
そして、重要な案件で、東垣内は久しぶりにバンコクへ行くわけことになるわけです。その時、今は妻となった光子に、沓子との関係を知られていたということも知るわけです。
でも東垣内は、なんだか反応は薄いし、これで許されたと思っているわけ。もっと背筋を寒くさせなよ。
後半でも、社長を譲るときに、今度は自分がバントをするというような、昔の野球の試合を引き合いに出して何か言ってるけど、本当に言ってる意味がよく分からん。
（←ここまで）
ここまでくると、珍品の味わいがあります。
TOHOシネマズ岡南スクリーン３にて
−２００９韓国／１３７分（Ｒ１５＋）−
シアターＦ．通信
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